彼はほとんど、家にいない。
朝早く家を出て、夜遅く帰る。
日々、近くの山中をさまよっている。
そして、家に帰る時はお土産だけは欠かさない。
彼は猫である。
僕が最初に彼を見たのは半年前。
街の中心部にある城山近くの道を歩いていると、
その道を軽快に横切る黒猫。
口元には鳥らしきものを銜えている。
そして古いビルの階段を駆け上がる。
そのビルには僕の女友達が住んでいる。
彼女は猫を何匹か飼っているのだが、
「もしかして、彼女の飼い猫?」。
彼女に電話をして確かめると、
やはり、飼っている猫だという。
彼女によれば
朝早くから、その黒猫(名前は横山君!)は
「外に出せ」とうるさく鳴く。その熱意?にほだされ、
外に出しているらしい。
毎回、黒猫(横山君)は山鳩など獲物を仕留めて、
誇らしげにドアを叩くという話である。
彼女は迷惑だと言うが、その声色はすこし誇らしげにも聞こえる。
(絶命した山鳩、羽根をむしり料理したらしい。美味だったそうだ。)
数日前に彼女と飲む機会があり、横山君の近況を聞いた。
横山君、狩猟の腕も上がり獲物もバラエティにとんできたとの事。
山鳩からきじ、時にはいたちも持ち帰る。
そんなある日、珍しい獲物を持ち込んだ。
「プレーリードッグ」である。
ペットとして飼われていたのが、
逃げ出したのか、あるいは捨てられたのか…。
プレーリードッグは十分に元気だったので、
引き取り手を探した。
知り合いの動物病院に相談したり、城山を管理している自治体に電話したり等。
(自治体の職員は「プレーリードッグ?どんな犬ですか」と。無理はないが)
ペットショップに持ち込むと、
「販売しますが、いいですか」と
簡単に引き取ってくれたらしい。
プレーリードッグは数年前から輸入規制の動物、現在、流通しているのは
国内繁殖のみであり、希少ペットである。
プレーリードッグ君、新しい飼い主のもとで幸せに暮らしているか、
彼女も知らないらしい。
この子は別のプレーリードッグ